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第14回:♪ 盈進中学高等学校環境科学研究部・大北 祐治さん

2012.10.15 掲載

こどもエコクラブに関わるサポーター・コーディネーターさんたちが、こどもエコクラブのサポートやコーディネートを通じ、どんな活動プログラムを行っているのか、またどんなことを感じているのかそのリアルな声をご紹介します♪

他のサポーターさんやコーディネーターさんのご意見は、クラブをサポートする側にとって大変興味深いものかと思います。このコーナーがクラブに関わる多くのみなさんにとって取り組みのヒント・今後の活動の充実のための参考となって、どんどんクラブが元気になりますように★

大北 祐治さん(JECサポーター歴15年)

フィールドワークの楽しさを体験するのは比較的容易ですが、
まとめる・蓄える・伝える力を育てるのはサポーターの熱意と
知識との両方が必要かもしれません。
大人になっても続けてくれることを理想にしています。

-サポーターProfile-

■クラブ名:盈進中学高等学校環境科学研究部(広島県)

■クラブカテゴリ:学校のクラブ/メンバー17名・サポーター2名

盈進中学高等学校環境科学研究部さんは、今年で登録15年目となるクラブ。
中学生から高校生まで計17名のメンバーが淡水魚に詳しい2名のサポーターとインタビュー.bmp一緒に活動を続けています。
サポーターの川や淡水魚へ向ける熱意、「エコ」と言う概念と真摯に向き合う姿勢が、長年メンバーを支え、導いていっているのではと思います。また、メンバー同士、そしてメンバーとサポーターの仲の良さが窺える楽しい活動を生き生きと報告してくれ、全国事務局も楽しみにしているくらいです。次回の報告が楽しみになります。文末ではリアル・ヴォイス初のメンバーからの一言も掲載しております。是非ご覧ください。

 ■クラブのメンバーとサポーターの構成を教えてください。

盈進中学高等学校①.bmpのサムネール画像 メンバーは中学1年生から高校3年生まで、年によって変わりますが10~20名といったところです。
サポーターはクラブ顧問の2名が担当しています。もともと学内に「環境科学研究部」がありまして、入部すると「こどもエコクラブ」もそうですが「スイゲンゼニタナゴを守る福山市民の会」とか「せとうち海援隊」とか「水生生物調査依頼」とかいくつかの団体に自動的に参加するシステムになっています。ですから、活動しているメンバーは、こどもエコクラブに入っているという意識は薄いかもしれません。

盈進中学高等学校①.bmp

■ホームページの活動報告を拝見すると、サポーターとメンバーがとても仲良しに感じられますが、サポーターとして心がけていることがあれば教えてください。

盈進中学高等学校②.bmpのサムネール画像のサムネール画像 まず、ホームページの活動報告ですが、6年間活動を続けると「金バッジ」がもらえるぞ、ということを最近メンバーたちに伝えたら欲しがりましてね。申し込んだんです。「バッジもろたらお返しせんと!」「報告はみんなで書こ!」「1年続けたらいいまとめになるで!」ちゅうことで書いています。 学校のクラブですから毎日顔を合わすから仲がよいように見えるのでしょうね。それと、サポーター2名が小さい頃から「淡水魚フリーク」だったからでもあるでしょう。「淡水魚は飛ぶことも、海や陸へ移動することもできない」進化の証人でもあるし、地球の水のたった1%にすぎない貴重な環境にいるため、環境のバロメーターとして私たちにさまざまな情報を伝えてくれる仲間でもあるわけです。たまたま2名とも生物の教師である前に、卒論も淡水魚、川遊び好きとすごい偶然があり、部員より採集を楽しんでいます。採集のときや生物に関する知識については理屈抜きで競争してしまってます(笑)。大人が真剣に遊びと学びを後頭部で示すことができているのかもしれません。

■活動報告からメンバーの皆さんが生き生きと自主的に活動している様子がこちらに伝わってきますが、メンバーの自主性などを育むポイントがあれば教えてください。

盈進中学高等学校③.bmp盈進中学高等学校④.bmp

 こどもエコクラブとは直接関係ないかもしれませんが、子どもたちに年に1度約3カ月の研究期間をあたえ「個人研究発表会」を公開してます。校長先生や保護者の方々などの前で、パワーポイントを用いて研究発表し、質疑応答や評価もあるので結構きびしい機会だと思います。
また、大学や学会での研究会にもできるだけ参加します。たまに、大学生でも「ようわかっとらんわ!」という発表に質問してタイムリーなヒットを打つメンバーもいれば、「ブラックバスを大量殺りくするのだあ!」と叫びトリプルプレイをするやつ(国立某大学へ進学!)もいて、波乱万丈ですね。
あと、いろんな環境に関する懸賞論文などには積極的に応募を呼び掛けています。毎年何人かが何らかのコンクールに入選し、全国や世界の子どもたちとの交流をしてきています。これは、もともと「生徒が入選すると顧問は日本国内はもちろんドイツとかフランスとかもタダでついていける」と考えたサポーターが「書け!活動をまとめい!」と積極的に騒いだことがいつのまにか先輩から後輩へとつながっていったようです。入賞しても顧問は参加できないと知ったときのショックは大きかったですなあ。
フィールドワークの楽しさを体験するのは比較的容易ですが、まとめる・蓄える・伝える力を育てるのはサポーターの熱意と知識との両方が必要かもしれません。大人になっても続けてくれることを理想にしています。 

■サポーターになって、悩んだり困ったりしたことはありましたか?またどのように解決しましたか?

 悩みは大きく3つあります。

 一番の悩みは、「エコ」という概念についてのずれです。エコロジーなのかエコノミーなのか判然としないこの表現で苦しめられることが多く、たくさんの誤解や横やりが入るのが悩みです。例えば、省エネ製品などにもよくエコという表現が使われています。それは、開発・製造・販売・使用・廃棄・分解までのコストマイレージを考慮した上での「エコ」なのか、あるいは経済の発展のために欠かせない「エコ」なのかが分からない。原子力発電などは典型的な商品だと思います。環境美化についても、今の里地の野草も少なくとも50%近くは明治以降の外来種が占めているわけで、元々の日本の生態系とは全く違っているんです。「きれいな公園づくり」とか「花いっぱいのキャンパスにしてよ、環境研でしょ」なんて言われるとなんかつらくなります。環境美化と環境保全は観点がちがいますよね。また、オオクチバスは特定外来種として指定されていますが、この種は約80カ国に移入されています。ところが、実は日本のコイは100カ国以上も移出されており、コイの方が世界的に大問題なんです。オオクチバスは魚食性で在来種をおびやかすことが問題と叫ばれていますが、コイは植物・貝・小魚と咽頭歯で何でも食っちゃうのですよ。そのコイを「街のイメージづくり」とかで水路に放すんですよね。そうなると基本的にもう終わりです。いくら地元の方々に話をしてもこれは解決できませんねえ。
地産地消も非常にエコロジーとしては優れているけれども、地産地消が進めば進むほど経済の発展にブレーキがかかる。これも矛盾です。部員たちはいずれ社会の一員として働くわけですから、できるだけ正確な事実をふまえた上で、「私たちのエコのスタンスは『エコロジー』である」ことを言っているつもりです。

 二つ目は、「仕事との両立」です。楽しそうに、ひまそうにやっているように見られがちですが、私学の教員という仕事は本当にきついです。へとへとです。当たり前のことですが、まずいくら時間がかかっても最優先で仕事をやった上で、こうした活動をしているつもりです。もともと教師志望の理由が「環境問題に関わり続けたい」という強い思いでしたから、1割程度でもやりたいことをやらせていただける今の環境には感謝しています。

 三つ目は、今後です。私は今年度で56歳、もう一人が51歳になります。26年間スイゲンゼニタナゴの保護活動に関わり続けてきて、学校や地域の方々の援助や協力の下、飼育繁殖室もでき、活動も広がっていますが、あと少なくとも4年後には私は職場を去ることになります。部員の中には「後継者になることを目指している」者もいますが、環境活動は、本来一つの私学が抱えるべき課題ではないと思っています。できることであれば「広島自然史博物館」や「芦田川街並み水族館」のような公的機関が設立されることを願っています。

 国交省関連・文科省関連・ついでにお金のない環境省の方たち・県・市にもことあるごとに話を持ちかけますが難しいですねえ。三重大学の河村先生と連絡をとりあって芦田川のスイゲンゼニタナゴをともに採集し、そのDNAを調べていただき、韓国のカラゼニタナゴと北九州のカゼトゲタナゴと備南地方のスイゲンゼニタナゴには明確な違いがあることや、芦田川の本種の遺伝的多様性は十分であるとの結果が出たところだけに余計悔しいですね。

盈進中学高等学校⑥.bmpのサムネール画像盈進中学高等学校⑤.bmp

■活動中の子どもたちは、どんな様子ですか?

 一言で言うとはじけています。女子も男子もあったものじゃないという感じです。いつも3~4グループに分かれ、それぞれのリーダーがしっかり指示しています。
サポーターはからかわれっぱなしですが、集合時間を確認するだけで十分安心して遊べます。
ただ、なかなか知識が追いつかない、種の同定もおぼつかない、記録をまとめるよりもとにかく採集に夢中な状態なので、毎回行う「わかちあい」がなかなか生かされないのが残念ですね。
その意味では、今年度からこの「こどもエコクラブ活動報告」を利用させていただいて感謝しています。写真記録以外のデータ記録の欄も勝手につくろうとみんなでもくろんでいます。

■盈進中学高等学校 環境科学研究部さんは、こどもエコクラブにご登録をされてから15年ですが、こどもエコクラブを通じてご自身が変化したことはありますか?また、サポーターとして活動を継続されている理由を教えてください。

 環境保全課の方にずいぶん懇意にさせていただきました。おかげさまで、壁新聞で全国大会に参加できたり、芦田川探検隊の講座を開いたり、出前講座を公民館や小学校で部員とともに行ったり、せとうち海援隊に推挙されたり、推薦文を知らないうちに提出されて地域の環境保全活動に対しての功労賞(環境大臣賞)をいただいたりと、よう分からんうちにいろんな体験をし、ようけ変わった知り合いができたことが大きな収穫です。自分で言うのもなんですが、真面目で堅物だったのが、さまざまな環境学習を通して、笑顔と冗談と相手を認める許容量が増えた気がします。

盈進中学高等学校⑦.bmp盈進中学高等学校⑧.bmp

 サポーターを続けている理由は本当に長くなりますので、ここまで読んでこられて関心のある方は、インターネットで「大北 祐治(おおきた ゆうじ)・地域の自然保護活動」を検索して見て下されば幸いです。要は、「スイゲンゼニタナゴを守らなあかん」と生徒に怒られたためです。

■中学生・高校生と言う、大人に近い子どもたちを活動に引きつけるコツ・活動を充実させる秘訣などがあれば是非教えてください。

 コツや秘訣は特にないと思います。部員たちに言わせれば「見た目は大人、頭脳は子ども」なんだそうです。好奇心が強いんでしょうね。おもしろいことがしたくてたまらないんです。今もコツコツとチリメンジャコの中のさまざまな生き物を集めて調べています。そうした収集物がそのうち環境学習の指導案に変わっていくんです。「しなければならない」的な学習や活動は、こっちが先に根を上げてしまいます。

■発表会への参加も多いようですが、活動を振り返ったり、まとめたりする時のコツは何かありますか?子どもたちが発表する際にどのようなサポートが効果的だったでしょうか。

 研究論文を作成する上での基本的なフォームについては指導します。理系の場合、パターンはほぼ同じですから一度「個人研究発表」を乗り越えさえすれば、作文はその文章化にすぎません。発表も要約化にすぎません。肩ひじ張らずに流れに沿って自分の言葉でまとめるように伝えています。
まず、パワーポイントでまとめさせることが一番効果的ですね。文章にするのは後回しの方が楽みたいです。

盈進中学高等学校⑨.bmp盈進中学高等学校⑩.bmp

■活動をはじめて間もないサポーターにアドバイスをお願いします。

 アドバイスなぞ、だいそれたことはとんでもないです。活動が終わった後、「楽しかったあ!」って自分が思えれば十分なんじゃないですか?

■今後の活動への抱負や意気込みを教えてください。

今年は、両サポーターともに30年ぶりにウェットスーツを購入しまして、さらに川遊びの楽しさが増しました。水中カメラも水中ビデオも同時に手に入れました。私たちは、「もうすぐ足腰も立たんようになるんじゃけん!今のうちにいろんな自然体験をせんといけん!」をモットーにしています。
大学の頃は、北海道から沖縄までいろいろな川をめぐったりしましたが、今は「まさに第2の青春」といったところでしょうか?
いつか部員たちと活動をまとめた本や図鑑を出版するというのも毎年言っては消えていく「うたかたの抱負」です。

【リアル・ヴォイス番外編!!~Petit☆リアル・ヴォイス~】

●メンバーの構成が中学生・高校生であり、活動報告もメンバー自らが書くことも多い「盈進中学高等学校 環境科学研究部」さん!・・・ということで、今回は特別企画☆彡活発な活動を支えて下さっているサポーターの先生方や普段の活動に対して、熱い思いをメンバーの皆さん(有志)に書いて頂くことになりました!(何とリアル・ヴォイス誌上初の試み!)

メンバーの秘めたる(?!)思い、皆さま是非ご覧ください♪

<サポーターへ一言>

・今のメガネが似合っていません。冷凍庫にモグラ・アオゲラなどの冷凍標本をたっぷり入れないで下さい。何より、私たちをほっといて単独行動するのはまだ許しますが、怪我をしてしまうのは本当に困ります。救急箱は先生用ではありません。(中3女子)

・もっといろいろな川に採集に行きたいです。マイクロバスがあればいいのですが、貧乏クラブなので。また、大人数のため全員で行けるフィールドが限られているのがつらいです。(高1女子)

・毎年3月に福山環境保全課と行う「スイゲンゼニタナゴの産卵母貝生息調査」は人数的にきついです。「スイゲンゼニタナゴを守る市民の会」の事務局もしているのですから、もっと大人の会員に呼びかけて大人数でやってほしいと強く思います。(高2男子)

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・松永の本郷川の水生生物調査に今年は行ってません。「試験が終わったら連れて行くからね。」と言いながら「潮が悪い。」といいわけをして久松床止めという近場ですませたのは許しませんよ。(高2男子)

・多くの部員がふざけつつ書いてますが、本心は、みんな感謝していると思います。全国大会への参加のための論文作成のアドバイスや研究発表の基本を徹底して指導して下さったり、自腹をきってでも他の研究機関と連携して調べに出かけてくれたりして下さいます。毎年何人もいろんな代表に選ばれているクラブです。ぼくも、何度か参加できたことで日本中の中高生と交流できたし、成長したと思います。日本代表を他の部員にとられたのは今も悔しいですが、もっと地域の環境について学んでいきたいと思っています。(高1男子)

みんなもチャレンジしてみよう!

「リアルヴォイス」では、幼児から取り組める簡単なプログラムから、学校や地域全体で取り組めるプログラムをご紹介いただけるサポーター&コーディネーターを大募集しています!また「こんなプログラムを紹介してほしいな」というリクエストも同時に受付けています♪

タイトルを「リアルヴォイス」とし、ぜひ全国事務局までメールをお寄せください。
プログラムをご紹介いただいた方は、こどもエコクラブ粗品を差し上げます。
皆様からのたくさんの声(ヴォイス)を、お待ちしています!

こどもエコクラブ全国事務局